凡庸

週一くらいが目標です。

一人なのに二人分の卵でくるんでいる

 今日も家内はおらず、一人で夕食をとった。


 引っ越して炊事場が広くなったおかげで、ひとつ料理でもしてみるか、という気になり、時々料理をしている。といっても男やもめの間はほぼ外食で済ませていたため、作れる料理はほとんどない。学生時代から数えて合計で6年は一人で暮らしている計算になるのだが、碌なものを食っていない。
 せいぜい、カレーや親子丼、肉じゃがや焼きそば程度のものしか作れず、先日家内に教わってようやく味噌汁を一人で作った。やってみれば何ということはないのだが、自分で作ると「この味はこれで正しいのか」という疑念が払しょくできず、なにか不味いものを拵えて食っている気分になる。
 これが他人の作るものであれば、不思議なもので、多少味や食感に違和感があったとしても「ほほう、これはこういうものなのだな」と合点し、美味い美味いと食うのである。もちろん食中りにも気付かない。
 そのせいで、実家の辛い味噌汁に舌が慣れてしまい、心持ち家内の味噌汁には物足りなさがあるのだが、「ほほう、これはこういうものなのだな」と飲んでいる。隙を見て、赤味噌を購入してこよう。

 味噌汁の話はさておき、僕の数少ないレパートリーのなかにオムライスがある。先に料理はまったくしない、と書いたが、ことオムライスに関してはキャリアが長く、学生時代には3日連続でオムライスを食べていた記憶もある。何度も何度も作ったのだ。
 と、ここまで書くと「この御仁はオムライスが得意料理なのだな」と早合点される方もあろうが、それは間違いである。あくまで何度も作ったことがある、というだけで、それと味の良し悪しは別である。大体にしてオムライス如きに格別の美味い不味いもないと思っている。
 それでもオムライスが得意、というのならば、僕の場合は、オムライスを作るときに炊事場を無茶苦茶に汚すのが得意である。卵を割れば殻や白身がへばりつき、玉ねぎやライスを炒める油はあちこちに飛び散り、フライパンはケチャップで真っ赤になり、ガスコンロの下にベーコンが逃げ込み、と大騒ぎである。
 おまけに、何度作っても、分量が多い。はっきり言って、いつも必ず二人前出来てしまう。オムライスを作るたびに食いたくもない二人前を食うのだから、腹も苦しい、銭もかかる、と何もいいことなしである。

 なぜオムライスの話でこんなに暗くなってしまうのか。家内が帰ってくる。隔筆する。