凡庸

週一くらいが目標です。

華麗なる幼児は生きづらさを感じさせない。

 先日家内が、職場のクリスマスパーティーでローストビーフを腹いっぱい食べるので帰りが遅くなる、というので同僚(女)を誘って飲んで帰った。以前家内に連れられて行った居酒屋が、日本酒の種類が多く、おまけにグラス一杯から飲ませてくれるうえに、たらこクリームスパゲッティがすこぶる美味かったので、ぜひ同僚を連れて行こうと思った。思ったのだけれど、店の名前も分からず、道もうろ覚えで、こっちかな、と路地に入ると妙なサイケデリックの電飾。おや、クリスマスイルミネーションか、と思いきやホテル街で、違う、そんなつもりも度胸も金もないんだ、と迷った挙句に目的の店は分からず、適当な焼き鳥屋に入った。
 初めのうちこそ、少し仕事の話もしたけれども、元来、仕事が終わってから仕事のことを考えるのが嫌な性質なので、むりやりに別な話に水を向け、飲んだ。同僚からは「どうせ、生きづらいんだから」という捨て鉢な台詞が聞けて大変満足である。


 結局仕事には触れず何の話をしていたかと言えば、今年観た映画で何がおもしろかったかとか、先日行ったというパフュームのライブの話をしたり、僕が一方的に「柔道部物語」のおもしろさを語ったりしていた。
 観たい映画があっても、なんだかんだとその1/5くらいしか観ていない。そのなかで、観て良かったと思った映画ベスト3は次の通り。


1.パシフィック・リム
 今年のベストはなんと言っても「パシフィック・リム」だった。もともとロボットも怪獣も大好きで、小学生低学年のころ一生懸命お小遣いを貯めて、ずっと前から欲しかった「メカニコング」(ロボなうえに怪獣!!)のソフビ人形も買ったものだ。そんな僕としては「よくぞこんな映画を作ってくれた!」とうれしい気持ちでいっぱいである。
 なんといっても、怪獣との戦い方がいい。ブログでも触れたけれども、ロボの一番固い部分を使って、頭の柔らかそうな所など怪獣の急所を何度も何度も殴り続ける、というファイトスタイル、これは、暴力、というものが持つ力強さや幼児性みたいなものからは、どんな最先端のテクノロジーも逃れられないんだな、と感じさせてくれた。
 なにしろ、超お約束展開を大真面目にやってくれるのだから、何度心の中で「待ってました!」と立ち上がったことか。全部見たことある展開だったが、それがうれしくてたまらない映画だった。


2.華麗なるギャツビー
 なんかの映画を観た時に予告がやっていて、それ以来多分半年以上、ずっと楽しみにしていた映画。「ムーラン・ルージュ」の面白さや壮麗さにびっくりしたので、是非ともギャツビーの乱痴気パーティーを映像で見たいと思っていた。あと、頭が悪いせいか、本読んでもギャツビー邸とキャラウェイ邸とブキャナン邸の位置関係がよくわからなかったので映像化してくれて本当に助かった。小説の映像化については賛否あることと思うが、自分の脳味噌以上に素晴らしい映像にしてくれるのなら大歓迎である。
 ディカプリオのキレ芸も見逃せない。ちょうど直前に「ジャンゴ」もやっていたし、なんていうか、ずーっとニコニコして穏やかな人柄気取っておいて、一瞬で沸騰するあのキレ芸は、これからディカプリオが映画に出るたびに期待してしまいそうだ。わかっちゃいるけど、ビクッとなって尻が1センチ浮く。
 惜しむらくは、トム・ブキャナン役の役者さんが、途中から世界のナベアツに見えてしまい、集中しきれなかったところ。


3.かぐや姫の物語
 つい先日の土曜日に観てきた。家内がどうしても観たいというので、正直気乗りしないまま、まあ普段具合悪そうにしていることだし、上機嫌に外出できるだけでもうれしいなと思って観に行ったら、これが面白かった。
 まず、ストーリーに関しては、原作の竹取物語ほぼそのまま、竹から生まれ、貴公子を袖にし、帝を拒み、月へ帰る。だからネタバレもクソもなく、なんなら1000年以上前にネタバレをされているようなものである。ほぼそのままなのだけれど、このストーリーが十分見応えがあったのだ。古典の持つ力、確かに大昔にこんなしっかりしたファンタジーつうんだかSFつうんだかが生まれている、古典は我が国の財産だなあとつくづく感じたのである。
 で、その古典を現代に「リメイク」するのだけれども、それがまたいい。近頃の日本の映画は漫画だのなんだののリメイク続きで、実際碌なもんじゃなく、おもしろかったのは「るろうに剣心」くらいのもんだ。やれ恋愛要素を入れて見たり、やれアメコミよろしく苦悩するヒーローを描いてみたり、その「付け足し」感が安っぽさを引き立ててしまうのだ。その点、この映画は古典を現代のアニメーション作品にするにあたって、「自然と生きる」みたいな太いテーマを一本だけ入れて、細かな映像や演出でそのテーマを語り続けるのだ。わざわざ新たにエピソードを加えたりだとか、主人公に長々と苦悩を語らせたりはしない。ごく自然にテーマ性みたいなものが、じわじわと感じられる。これが「リメイク」の仕事かと、とても感動した。


 来年は子どもが生まれるので、もっと映画をみることが難しくなるんだろうなあ、と同僚にこぼしたところ、「きっと映画よりもずっと赤ちゃんのほうが観てて楽しいですよ」と言われた。そうかもしれない。