凡庸

週一くらいが目標です。

情けない春の夜の顛末。

 家内を怒らせてしまい、しばらくインターネットの利用を控えていた。

 かいつまんでいうと、僕が明け方おねしょをし、同じ日に断れないまま急な飲み会に出かけ、ふたりで食べようと酔っぱらった勢いで買ってきたドーナツを、家内がすでに寝ているものと思い込んで結局自分ですべて食べてしまった、という話がことの起こりである。

 この件に関して家内が起こるのも無理はない、全面的に僕が悪い。

 その家内に怒られる中で「こういう家庭内の不和は余所へ他言してくれるな」という意味のことを言われた。これはまさにブログのことを言われているのではないかと僕は震えあがり、ほとぼりが冷めるまでしばらくの間なりを潜めていた次第である。これがしばらくインターネットから距離を置いていたことに関する簡単な顛末だ。

 詳述は控える、また家内を怒らせたり嫌な思いをさせたくないからだ。

 

 それにしてもおねしょだ。おそらく20年ぶりといってもいいと思う。僕は20年ぶりにあの不快な寝覚めを体験した。いや、寝覚め以上に、「おねしょをしてしまったみたいだ…」とまだ寝ている家内を起こして打ち明けたあの瞬間、子どものころの母を起こすときのあの瞬間の気分を強烈に思い出した。あの心から情けない、申し訳ない気分である(なぜ自らのおねしょごときで家内を起こしたのかというと、一人前の大人である僕は家族のために働きにでかけなくてはいけないわけであり、出勤の時間が迫るなか、布団やシーツの始末が十分にできないだろうと思い、最低限の後始末のその後を依頼しなくてはいけないと寝覚めたばかりにかかわらずはっきりした頭で判断したからだ)。

 これで僕は「いい歳しておねしょの後始末をしてもらった家内」に二度と頭が上がらないことが決定的になった。もともと言った覚えもないが、金輪際えらそうな口は叩けないだろう。

 念のため、家内の名誉のために言っておくと、僕のおねしょの件で家内が僕を見下げるようなことはなかった(と思う)し、そのことについて家内を怒らせたわけではない。

 それにしても、その日仕事でもいくつかミスをし、よりによってそんな日に断りづらい人に飲みに誘われてしまい、捨て鉢な気分で飲むものだからやけに寄ってしまって、まあ、ドーナツだ。そういういろいろが重なった日だった。

 

 ほら、「詳述はしない」とか言って結局書いてるし。

 でも僕としても何かの形で情けない気分を吐き出さないことにはそれなりに気がふさぐのだ。恥ずかしい家庭内の不和の話(不和ですらないか)を世間に言って、家内にまで情けない思いをさせてしまうかもしれないが、知らないふりをして勘弁してほしい、申し訳ない。

 

 娘は僕らのことをついに「かーしゃん」「おっとー」と呼ぶようになったし、畳んだタオルを脱衣所まで持ってついてきてくれるし、公園のアスレチックもずいぶん上達した。家に余っていたキャンパスノートを広げてやると、色とりどりのクレヨンを使って思うさまに書きなぐる。ノートなので紙がバラバラになってしまわず、そのまま思い出として保管できるかもしれないと思っている。

 家内と僕の誕生日もあった。家内の誕生日には三人でケーキを食べに出かけ、僕から手紙を書いた。僕の誕生日は僕自身が社員旅行で家におらず、日付が変わったところで家内からLINEがきた。それだけで、誕生日プレゼントはまだお互いに何も買っていない。

 娘は4月から保育園だ。入園式の日には半日休ませてもらえるようなのでカメラを持って参加するつもりでいる。今度実家の母が来て、一緒に娘の入園式に着ていく服を選ぶ予定だ。春が来る、おねしょをしたけど。