凡庸

週一くらいが目標です。

アンセムがだらだらと鳴り響く美しい夜の幕切れ。

しばらくブログを書いていない間にそれなりにいろいろあって、いつのまにやら夏も終わった。順を追って書き残しておくのもいいけれどたぶん途中で飽きるので思いつくままに書いていく。

 

 とうとうクラブデビューを果たした。もうすぐ30になろうというのに年甲斐もなくクラブデビューを果たした。というかそもそも30という年齢が「年甲斐もなく」なのかどうかすらわからないほどそういうものに疎いわけで、「年甲斐もなく」と言っているのは、まあ、保険みたいなものだ。

 我が家のアンセム「水星」の作曲者であるtofubeatsが大阪のクラブにくるらしい、という情報をTwitterで得た。その少し前に味園ユニバースのイベントでライブデビューをし、大きな音で音楽を聴く楽しみを知った僕はこのイベントにも行ってもよいだろうかと家内にお伺いを立てた。このイベントは夜遅くから始まるイベント(しかもお目当てのtofubeatsが登場するのは2時とかそのくらいだった)なうえに、当日は娘の運動会で両家の親が集まるというそれはそれでビッグイベントがあるにもかかわらず、家内は快諾してくれた。家内のやさしさに涙があふれそうになった、気持ちの上では。

 

 運動会も無事終わり、両家の親もきちんともてなし、娘も風呂に入れ、家内に寝かしつけてもらった頃、心の中ですまないすまないと言いつつ意気揚々と家を出た。22時を過ぎた都会行きの電車は空いていて、「いまから夜遊びしに行くんすよ、フフン」という顔をして乗った、もうすぐ30になるのに、妻も娘もいるのに、年甲斐もなく、上下ユニクロのくせに。

 怖そうな若者や、イケイケな店でイケイケな感じで飲んでいる人たちを横目にクラブを目指した。もともとネットとかでいろいろな評判を調べて、ここなら怖くなさそうだな、と僕なりに目をつけていたクラブで、そこにtofubeatsが来てくれるというので勇気が出たのだった。入り口でdoor(入場料をかっこよくこう言う)と1D(ワンドリンク代をかっこよくこう言う)を払って、手の甲に再入場用のスタンプを押してもらう(このへんはこないだ行ったアンパンマンミュージアムと一緒)。

 

 中に入ると相当デカい音でズンズン鳴っている、けれど人はまばらだ。でも僕は慌てることはない。とんかつDJアゲ太郎でピークタイムは2時から4時くらいである、というのを予習してきているからだ。でももう23時なのに、まだ早いのか。仕方ないのでドリンクチケットを渡してビールを買った。

 ビールを飲みながらフロアを見るとまばらな数人がみんなスマホの画面を見ながらゆらゆらしていてとても未来っぽい感じがした。これが21世紀のクラブか!とだらだらとビールを飲んでいると段々と人が入ってきた。「ウェーイ」みたいなことをやっている顔見知り同士っぽい人たちも増えてきて、でも相変わらず僕はすることもないので一人でだらだらビールを飲むしかなくて少し退屈だった。まわりの人を真似してフロアで体をゆらゆらさせながらビールを飲んで、少ししたら疲れたり飽きたりして壁際に腰かけて周りの人をながめて、またそれに飽きたらゆらゆらしにいって、と繰り返すうちに少しずつ慣れてきて人も増えてきて興が乗ってきた。ビールもだいぶ飲んだ。でも相変わらず一人で少し寂しかった。

 

 ビールをたくさん飲んだのでしょっちゅうトイレに行った。一人なので「ちょっとトイレに…」とか誰かに断る必要がないのでそれはとてもいい。トイレに行ったら通路のところにtofubeatsがいた、「水星のアレンジは大臣的には~」みたいなことを言っていた、生tofubeatsはデカかった。通路にいた外国人に、いま曲かけてるDJはとてもクールだね、みたいなこと言われたので、僕はtofubeatsを指しながら、He is cool DJ too.とか中学生みたいなことを言った。それからまた新しいビールを飲みながら少し考えて、もう一度トイレの横の通路に出て、tofubeatsと誰かが通っぽい会話をしているところに割り込んで「握手してもらっていいですか」と声を掛けることができた。ビール効果だ。「2歳の娘も『水星』の大ファンなんです」と伝えることもできた。「え?お父さんがこんな時間に遊んでていいんですか?」みたいなことを言われた。そうだ、僕は年甲斐がないのだ。

 それからもじわじわ人が増えていき、tofubeatsがプレイする頃にはギュウギュウとは言わないまでもかなり大勢の人がフロアに出てきたので、一緒になって体をゆらゆらさせたり手を上げたりしていれば寂しさを忘れて楽しかった。朝の4時までそうやってビールを飲みながらふらふらとやっていた。クラブ初心者だったけれど、tofubeatsがプレイしているときが一番楽しかったしみんなも盛り上がったので、やっぱり有名人だけあって上手かったのだと思う。

 

 それが終わるころにはすっかりくたびれていたので、まだ始発まで時間があったけれどクラブを出た。どこかに入ろうと思ってマックとか覗くのだけれど席がいっぱいだし、あそこに交じってぐったりと始発を待つのはこの素敵なクラブデビューの夜の幕切れとして美しくない。そうやって、足が疲れていたのでどこかで休みたいなと思いつつ駅のほうまで歩いて行った。

 結局味園ビルまで来た。ここならどこかしら朝までやってる店があるだろうと思った。朝4時の味園ビルは静かだった。適当なところに入ってビールを一杯飲ませてもらった。マスターに初めてクラブに行ってきたという話をして、マスターが夏にフェスで仕事をしていたという話を聞いて、そうやっているうちにビールも飲みほした。始発の時間も過ぎていた。

 

 家に帰って、その日の午前中は寝かせてもらっていた。ほんとうに家内はありがたい。

 思いつくままに書く、とか言っておいてクラブデビューした話をだらだらと書いて終わり。