凡庸

週一くらいが目標です。

風呂桶から始まる明るい新生活

 結婚を機に、新居に引っ越し、現在住環境を整えている最中である。


 誰かと同居するのは初めてであるものの、結婚するくらいなので気の知れた相手であり、それほど肩肘は張っていない。
 しかし、やはり身の回りのものは全て一人で使うわけではなく、共同で使うものになるため、独断で何かを購入し部屋の中に置いておくわけにはいかず、アレを買うにもコレを買うにも一つひとつに内儀さんの了承が必要になってくる。
 特に炊事場や風呂場は内儀さんの領分となるため、もしこちらが必要に駆られて勝手に風呂桶やスポンジ台を買い、それの機能やデザイン、匂いなんかが気に入らなければ酷く叱責されるに違いない。そんな目に会うくらいなら「入れ物がない手で受ける」ほうがなんぼかマシである。


 さて、今日休日を利用して、今まで放ったらかしにしていた、インターネットの設定をした。時間かかるだろうなあめんどくさいなあ、と思えばこそこれまで見ぬ振りを通してきたのだけれども、実際に取り組んでみると、ものの1時間(そのうち50分はIDやパスワードが記載された書類を探していた)程度で済んでしまい、なんだこんなものか、気を良くして電気屋に出かけた。
 せっかくなので、暗くて寒い部屋でモソモソとインターネットをせずに、明るいリビングで、夫婦顔を並べてyoutubeや友人のブログなんかを見たいと思う。そういう明るい生活のためにも、部屋中でインターネットができるよう、是っ非とも無線ルーターが必要であった。
 だけれども、こちらは素人で何を買っていいものやら分からず、売り場をうろうろしても値札以外に理解できる情報はなく困っていた。するとそこへ偶然女性の店員が通りかかり、その店員が偶然利発そうな美人であったため声をかけ助けを乞うた。利発そうな店員は「少々お待ちください」と無線で若い利発そうな男性店員を呼び、「このみすぼらしい男に案内を」と小声で指示した。
 利発そうな男性店員が「御用の向きは」というので、むにゃむにゃとこちらの要求を伝えると、話半分ほどで「でしたらこちらがよろしいでしょう」と5千円くらいのものを勧めてきたので、僕は言われるがまま買うことにした。


 これで夫婦の明るいインターネット生活が始まる、と気持ちが嬉しくなり、嬉しい気持ちついでにガソリンスタンドの隅にある洗車機械に車を入れ、高圧ジェットウォッシュをしてもらいながら、ふと気付いた。今回の買い物は内儀さんの相談なくして買ったものである。
 僕としては、病めるときも健やかなるときも、笑顔の絶えない家庭を築くために、よかれと思って買った無線ルーターである。しかし、5千円の出費といったら、それ、5千円のものが買えるくらいの大きな出費である。内儀さんは買い物が上手いので、もしかしらた5千円のものどころか6千円のものを買ってくるかもしれない。
 それどころか、僕ときたらあの利発そうな男性店員に言われるがままに、「5千円です」と言われるがままに、一も二もなく機械を購入してきた。果たしてその価格設定は妥当なのであろうか。僕を盆暗と気付き、本来3千円程度でいいものを、ちょっと高級なほうを買わせたということはないだろうか。
 だとしたら、内儀さんにこの買い物を任せたとしたら、内儀さんは我が家に必要な機械は3千円のほうであると即座に見抜き、それを2台購入して6千円となる買い物を上手にやって5千円にして帰ってきたかもしれない。つまり、都合僕の場合は1台しか買えなかった機械を、内儀さんなら2台購入できたことになる。


 叱責は必至、明るいインターネット生活どころか、僕は暗くて寒い部屋で泣きながら「怒られる 立ち直り方」などで検索する羽目になりかねない。これはまずい。
 そういう次第で内儀さんには今回の出費を、隠し通せるところまで内緒にするとして、とうとうバレてしまったら、このブログを見せ、いかに僕が二人の新生活を明るくしたい思いで今回の買い物をしたのか知ってもらおうと、ブログを始めることにしました。