凡庸

週一くらいが目標です。

尿管結石、下から出るか、下から出てよ

 ゴールデンウイーク中に病院に行った。なんてご時世的に剣呑に感じられてしまうかもしれないが、発熱ではなく腰回りに強烈な鈍痛を感じたからだ。痛みの原因はわかっていた。10年ほど前に味わった尿管結石だった。

 そもそもその二日前ほどから排尿や尿意に違和感があったので、これはもしやと思っていた。気のせいであってくれと思っていた。祈りを込めてたくさん水分を取った。だけれど悪い予感はあたるもので、せっかくの連休の朝だというのにあまりの痛みに寝ていられず、どうもこれは逃れようもないと観念して妻を起こして、近所で診てくれる病院を探した。

 10年前、学生の頃に一人暮らしのベッドの上でのたうち回り、唸り声をあげ、タオルの端を噛みながらこらえた痛みがまた来ようとしていると思うと脂汗が出た。ただ、前回の教訓が活きたおかげで、2日前から予兆を感じていたし、いざ痛み始めたところでもその痛みの正体がわかっているので手際よく診察の予約もとった。9時の診察時間に間に合うよう頼んだタクシーを、急いだところで診察時間が早まるわけでもなく意味がないとわかりつつ、痛みをこらえながら家の前でそわそわとしながら待った。

 襲う痛みにタクシーの後部座席で今にも横になりたかったけれど、この時期に「病院にやってくれ」という客は運転手さんからしても嫌だろうと思ってなるべく平静を装った。早く病院についてくれと念じながら(9時からしか開かないっつってんのに)歯を食いしばってタクシーに揺られていた。

 揺られていた。そのおかげで尿管を塞ぐ石の位置がずれたのかもしれない。ふと鈍い激痛や重苦しい尿意と便意が(汚くて申し訳ない)が和らいだ。ありがたやありがたやと上手く揺すぶってくれた運転手さんに感謝していると病院についた。

 コロナ禍においてさぞ大変なことになっているだろうと半ば申し訳ない気持ちで病院に行くと、緊急外来は僕一人で少しホッとした。呼ばれて診察され、かってに症状名を言うのも嫌がられるかと思いながらも尿管結石ではないかと告げ、エコーとレントゲンとCTスキャンを撮ってもらい、果たして左の腎臓に2ミリほどの結石が見つかった。

 痛みが和らいでいたので、もしやすでに下のほうに落ちているのではと期待していたがそうはいかなかった。その残念な気持ちと一緒に、自分の体の違和感の正体がピタリとわかったことの誇らしさが少しだけあった。

 水分とってくださいね、痛み止め出しておきますね、という10年前と変わらない処方をされて、石とともに帰路についた。帰りのタクシーは行きと比べて200円ほど高かった。

 それから四、五日経つけれども尿意の違和感が残っているのでまだ結石を腹に抱えているのだろう。昨日の朝もひどい痛みがあった(石が出るまで激痛が続いた前回と比べて、今回は石が出ないまま変な尿意を抱えつつとりあえず生活を送りつつもたまに激痛に襲われるという、症状の違いに少し戸惑っている)。

 早く良くなりますように、という祈りを込めて、やかんで麦茶を沸かしてはガブガブと飲んでいる…。