凡庸

週一くらいが目標です。

ドライアイスはいらなかったな。

 昨日、夕食も済ませてお風呂も済ませて子どもたちが寝る前の時間帯。みんながだらだらしている時間帯に妻が「ショートケーキが食べたいなあ」と言い出した。

 僕もふざけて「仕方ない、いまから買ってこよう。コンビニでいい?」と聞くと「桜ノ宮の帝国ホテルのショートケーキがいい。ほんで、買ってきたら窓から投げ捨てて『チョコレートケーキがよかったのに』ってわたしが言うからお父さんは『ごめん、僕はロバのように間抜けだった』って謝って」と、ふたりでふざけていた。

 子どもたちも何のことかわからないけどおもしろがっていた。

 

 そういうことを思い出して帰りに何軒かコンビニを覗いたけれど、ショートケーキは売ってなかった。ショートケーキ売ってなかったよ、と半ばふざけて妻に伝えると、思ったよりも妻はがっかりしていた。「え、なに、本気だったの?いまからでも買ってこようか」と提案すると、ちょっと待ってとスマホで調べだした。本気だったのか。子どもたちも、ほんと?ケーキ?と期待している。

 あそこは閉まってるか…シャトレーゼでもいいんだけどせっかくだし…と結局家から自転車ですぐのところのケーキ屋がまだ開いているようだったので、夕飯の前に僕が買いに行くことになった。

 

 まったくバカバカしい話だと思う。妻の思い付きで(たしかにハロウィンではあるけれど)特に何という意味のない日にわざわざ閉店間際のケーキ屋にショートケーキを買いに行く。バカバカしい話だと思う。でもなんかいいなとも思う。

 ケーキ屋の途中、若い人たちが自分たちに聞こえる声で笑いあっていた。

 妻のショートケーキと長女のチョコレートケーキと僕のマロンクリームケーキと次女の焼き菓子を買った。店はパティシエのおじさんひとりで、ちょっと不慣れそうにお会計をしてくれた。

 

 バカバカしいのになんかいいなと思うのは、たぶん相手からの信頼が感じられるからなんだと思った。

 思い付きでちょっとそこまでケーキを買いに行ってくる程度のわがままを叶える程度の信頼。またバカなこと言って、と却下されないだろうと思ってもらえるくらいの信頼。家族の、夫婦の温度感としてなかなか丁度いい気がするなと思った。帰り道でもまだ若い人たちは同じ信号の前でくすくすと笑いあっていた。

 

 特に意味のない日だったけどケーキはなかなかおいしかった。みんなもそれなりに喜んでいた。来年のハロウィンに誰か思い出せるといい。