凡庸

週一くらいが目標です。

近くて遠くて高くて低い

「おばけキャッチ」という、カードゲームというべきかテーブルゲームというべきか、そんなゲームを買って遊んでいる。

ルールはまあインターネットに聞いたら教えてくれると思います。とにかくこのゲームは、買って2日目くらいで大人が子どもたちに後れを取りつつある。そんなゲームです。

 

 

Twitterで「接待プレイせずに子どもと一緒に盛り上がれる」と言っている人がいて、ほほうと思っていた。

日曜日に家族でショッピングモールへ行った際、プラモデルを物色しに入った電気屋テーブルゲームコーナーに売っていた。特に妻のお伺いも立てず買った(次女をそそのかしてトリケラトプスのプラモデルも買った。これも次女がせっせと作るのを眺めているのが楽しかった、いい買い物だった)。

 

長女はすぐにルールを覚えた。次女もはじめはちょっとわかりづらそうにしていたものの、素朴でかわいらしいおばけやネズミのマスコットにつられてがんばってルールを覚えた。

ルールを覚える際に、長女が僕と一緒に忍耐強くかつ上手に褒めそやしてやりながら次女につきあっていて、長女もずいぶん大人になったもんだと思っていた。

次女もゲームの箱を開けて、何やら一人で自主練をしていた。

 

実際、やっているうちに確かに大人が接待しなくても子どもたちの反射速度に驚かされるようになった。Twitterで言っていたとおりだ。

すると大人が子どもに負けるのだから、当然、次女と長女とが競るようにもなる。

そしてとうとう家族四人の中で次女が一等賞になるゲームがあった。

 

そのゲームの途中からすでに旗色の悪くなってきた長女がムスッとしているなとみんなが気付いていた。

もともとこの子は小さなころからトランプやカルタや双六など、勝ち負けに執拗にこだわって、負けるともなると目に涙を浮かべてすねてしまう性質の子だった。

それで従姉兄たちに気をつかわせたり親に叱られたりしていた。

最近はそうでもないかなと思っていたのだけれど。

 

そんな様子の長女が何か言われそうになって「我慢してる!」と半泣きで怒った声を出すのでとにかく風呂に入ろうと促した。

 

「大人とかに負けるのはいいねん。でも友達とか○ちゃん(妹)に負けるのはどうしても我慢できへんくなってしまうねん」

「とくに○ちゃんにはときどき手加減とかしたり優しくしなあかんって言われるけど、そういうの嫌なときもあるねん」

「○ちゃんともっと歳が近かったらよかった。そうしたら優しくばっかりせんくてもいいから」

「お姉ちゃんだって優しくしたくないときあるし、負けたくないときあるし」

と頭を洗いながら長女は文句を垂れていた。

 

そんな話を聞きながら僕も思い当たることがあった。

「その話聞いてて思い出したなあ。

お父さんもさ、あなたと同じでお兄ちゃんじゃん?

お父さんたちも子どものころ一緒に遊んでて、ミニ四駆とかも一緒に作ってたのね。

それも、お父さんはお兄ちゃんだから先にミニ四駆やってて、弟もやりたいってなったの。

それで、お兄ちゃんのほうが詳しいからモーター選んであげるってなったの。

そのときさあ、お父さんさあ、ちょっと遅そうなモーターを選んだんだよね。お兄ちゃんで負けたくなかったから。

ズルいし、しかもさ、そのモーターがあとから珍しいレアモーターになっちゃってさ、

弟も『お兄ちゃんが選んでくれたモーターってレアなんやろ』って自慢してきてさ。

なんか、それがすっごい悔しかったのを思い出したわ。

お姉ちゃんでもお兄ちゃんでも、負けたくないし優しくばっかりもできないよねえ。」

長女は話を聞いて、湯船の中でちょっと笑っていた。

 

別に説教めいたことを言いたかったわけでもないし、慰めるつもりがあったわけでもない。

世の中のどんなに仲のいい兄弟や姉妹にも、ずるさや後ろめたさや優しくなさってあるもんだよなあ、と娘たちを見ていて思い出したのだった。

たぶん、自分たち兄弟にもそういうことはたくさんあったんだと思う。

 

今度帰省する際にも「おばけキャッチ」を持っていくと子どもたちは言っている。

もし弟も来ていたら一緒にやろう。

こっちは家族を相手にしっかりと練習を積んでおいて、そしてあっちが慣れてくる前にコテンパンにしてやるのだ。

 

それはそうとまだ実家のどこかにあんのかな。ハイパーミニモーター。

そんな経緯にも関わらず、結構アレ弟の宝物みたいなもんだったと兄としては認識してんだけど。