学生の頃、気軽に集まれる距離にみんなが生活していたので、あと必要なのは集まる理由で、春で桜が咲いていたので花見をすると言って5,6人集まった。
その頃は5,6人では少なく感じたけれど、今となってはあんなふうに気軽にぞろぞろと集まれるのは奇跡のように感じる。
なんとなく昼の花見よりも夜桜見物に集まることになった。そのほうが人は少なそうだし酒を飲む気分も盛り上がるからだと思う。めいめいが欲しい分だけ飲み物やつまみを持ち寄って、円山公園に集まった。ブルーシートは誰が持ってきてくれたんだっけ。そんな気の利くやつ、というかブルーシートなんてもってそうな人物は思い浮かばない。そもそもあの花見に誰がいたのかすらきちんと覚えていない。写真も残っていない。
とにかく、学生の頃に酒とつまみとブルーシートを持ち寄って円山公園で夜桜を見たという思い出だ。
実はその少し前に僕は彼女ができた。いまの家内だ。
僕らは同じコミュニティの仲間だったので、変に気を遣われるのが嫌で、なかなか周りに打ち明けられずにいた。といってもずっと黙っているわけにもいかないなと思い、僕はその日の花見でみんなに話すつもりでいた。花見には家内もいたと思う。
今になって思えば、たかがその程度のことをみんなに話すくらいのことで思い切りが必要なんだと思うのだけれど、まあだいたいの若者は感傷的だし自意識過剰なものだ。
そういうわけで、感傷的で自意識過剰な若者だった僕は酔った勢いということにしてみんなに話そうと、あまり飲めないくせに無理して飲んだ。
無理して飲んで、自分がどんなふうにみんなに話したのか、みんなの反応はどうだったのか、家内はどんな表情をしていたのか。覚えていないのは酔っぱらっていたからだと思う。
覚えているのは、2回くらいトイレに吐きに行ったこと、ブルーシートの上であおむけになっていたこと、その上からみんながマフラーとか上着とかをかけてくれたことだ。
そして仰向けになったまま、僕は夜空にUFOを見た。
ふつう夜間の飛行機は機体の光をを点滅させながら飛んでいると聞いたことがある。その夜僕が見た光は点滅せず、飛行機よりももっと低そうなところをぬるっと滑るように飛んでいた(ような気がする)。
もちろん僕は周りのみんなにUFOが飛んでいると言ったはずだ。みんなだって夜空を見上げてくれたはずだ。
その晩を境に僕らの仲はオープンになり、困ったことといえば下ネタを言うと妙に生々しくなってしまうので言えなくなってしまったくらいのことで、みんな自然に受け入れてくれたし、むしろみんなそんなに気にしなかったようだ。
結局、僕が感傷的で自意識過剰なだけなのだ。今だにそうなのかもしれないと思うことがある。
大人になってからも家内にも何度かこのUFOの話をした。ただ反応は芳しくなく「酔っぱらってたんやろ」程度のことだ。あの晩、同じ夜空を見上げたとは思えない反応だ。
本当に僕はUFOを見たんだろうか。
それから、花見もしたはずなのに桜そのものの覚えがないのはありがちな話だ。
ちなみに僕と家内は吉田山の上空あたりをボーリングのピンのような形をしたUFOが飛んでいるのを見たこともある。河原町今出川にあったマクドナルドから出てきたところで見つけた。これは今でも二人で話すことがある。マクドナルドはもうなくなっているらしい。
京都の空には時々UFOが飛んでいる。